平成18年度:食の循環を目指し、大量に排出される焼酎粕をリサイクル

環境リサイクル技術開発支援事業

焼酎粕を使った家畜飼料

製造過程で大量に発生する焼酎粕を、家畜の飼料や農産物の肥料に加工。
資源の効率化を図るとともに、薬剤や抗生物質を使わない農畜産業の普及を目指しています。

業界に先駆けた、焼酎粕利用

事業の体制・仕組

焼酎の製造過程で大量に発生する焼酎粕。雲海酒造の工場だけでも、1日に60トンもの焼酎粕が生じ、廃棄物として処理されてきました。焼酎業界で“環境への負荷を低減させるため、焼酎粕の海洋投棄を全廃する”という自主規制が作られたこともあり、同社では焼酎粕のリサイクル利用を目的とした飼料事業部を業界に先駆けて、平成11年8月に設立します。
「焼酎粕は食品の発酵残渣なので、豊富に栄養が含まれていて、利用価値が高いことは確認されていました。費用をかけて処理していた焼酎粕を家畜の飼料や農産物の肥料などに利用できれば、資源の効率化になると思い、宮崎大学や宮崎県畜産試験場などとグループを組み、焼酎粕の高度利用に関する研究をスタートさせたのです」と飼料事業部の大津山主任は話します。

焼酎粕を家畜飼料に

ケースに保存されている焼酎粕を確認する職員

家畜の病気を防ぎ、同時に成長を促進させる有用微生物を焼酎粕で培養。有用微生物を鶏と豚用の飼料に混ぜて、飼育試験を行うと、抗生物質を用いた飼料と同等の効果が得られました。
「有用微生物を使った飼料を与えると、従来の飼料に比べて、たくさん食べてくれるんです。今では焼酎粕を使った飼料技術を確立し、牛の混合飼料の販売まで行っています」と飼料事業部の上野次長は話します。

肥料や農薬としても

 同研究では、焼酎粕の濃縮液を畑に与えると、土壌温度が高まり、有害微生物の殺菌効果や有用微生物の活性化につながることが明らかになりました。
「焼酎粕は窒素を多く含んでいるので、速効性の肥料としても利用できます。土壌中の微生物を改善しながら、養分を供給する特殊肥料として、焼酎粕加工液の開発にも成功しました。現在、メロンやトマトなどの栽培に使っているんですよ」

焼酎粕の研究は終わらない

焼酎粕が農畜産物などに効果的なことは分かりましたが、焼酎粕のどの成分がどのように働いて、良い効果を生み出しているかまでは、詳しく研究する余地があるのだそうです。
「焼酎粕の研究はまだまだ続いていきます」と、大津山主任と上野次長は焼酎粕の更なる可能性に期待しています。

焼酎粕を唐いも栽培に利用し、食の循環を目指す

今後のビジョン

この研究の最終目標は、焼酎粕を利用して唐芋を栽培すること。「焼酎を製造する。製造過程で生まれた焼酎粕を肥料にする。その肥料を使って、唐芋を栽培する。その唐芋で焼酎を製造する」という、酒造メーカーならではのサイクル「食の循環」を目指して、今後とも、宮崎県総合農業試験場と共同で、焼酎粕の研究を行っていくのだといいます。

この事業を通じて

「宮崎県に、焼酎粕で培養した有用微生物を使う無投薬農畜産業を普及させていきたいです。生産規模がトップレベルである宮崎の農畜産物に、健康的なイメージを付加価値とすることができれば、県全体が農畜産業を通じて、盛りがっていくのではないでしょうか」と大津山主任は意気込んでいます。

企業概要

雲海酒造 株式会社 企業外観

雲海酒造 株式会社
宮崎県宮崎市昭栄町45-1
電話:0985-23-7890

昭和42年、五ヶ瀬酒造有限会社として創業。昭和53年に雲海酒造と社名を変更し、宮崎県の五ヶ瀬・綾・高岡、鹿児島県の出水に生産拠点を持つ酒造メーカーへと成長しました。
本格焼酎や清酒、ワイン、リキュール、地ビール、発泡酒、ブランデーの酒類を製造、特に本格焼酎は国内外を問わず、高い評価を受けています。世界的な食品コンテストである「モンドセレクション」では、そば焼酎「雲海」、麦焼酎「綾セレクション」「大河の一滴」などが金賞を受賞しました。

更新日:2023/03/11担当:新事業支援課