平成21年度:ニンニク等の恒温温室加工製品化・歩留まり向上のための装置および製品開発

環境リサイクル技術開発支援事業

循環型農法で育てられる黒にんにく「くろまる」

宮崎大学工学部と共同で、黒にんにくを安定して熟成させることができる恒温高湿装置を研究開発。それまでは40% もあったという製造過程での口スを10% まで減少させることに成功しました。

製造工程で生じるロスを減少させる

黒にんにく「くろまる」の栽培から加工・販売までを行うMOMIKIでは、製造過程におけるロス (廃棄物)が全体の40%にも及んでいました。約半分ものにんにくが廃棄されてしまう現状に懸念を抱いた籾木社長は、歩留まり向上のための装置開発を決意。宮崎県産業振興機構に相談に訪れます。
MOMIKIの黒にんにくは、一定の温度と湿度が保たれた製造装置内で風を送り、発酵させることで作られます。この発酵過程に問題があるのではないかと着目した宮崎県産業振興機構は、流体のプロフェッショナルである宮崎大学工学部の研究チームをMOMIKIに紹介。環境リサイクル技術開発・事業化支援事業のもと、黒にんにく製造装置の開発が始まりました。

学生たちと切磋琢磨した研究の日々

熟成された黒にんにく

装置の実験は困難を極めます。最もネックになったのは、2~3週間かかる熟成期間に装置内の状況を直接確認できない点でした。
「原料である生にんにくの大きさには個体差があり、あたる風量はすべてが一定ではありません。表示される装置内のデータだけを頼りに、夜遅くまで細かな調整を重ねる日々が続きました」と、籾木社長は当時を振り返ります。

栽培するにんにくを無駄なく利用できるように

10%のロスから作られるMOMIKI独自のアミノ酸液肥。栽培中のにんにくの肥料として使用されています。この液肥の使用による品質の向上が期待されています

苦労の甲斐もあり、歩留りを約90%まで上げることに成功。これにより、利益を生み出すだけでなく、ロス (廃棄物)の大幅な削減にも繋がり環境面でのメリットも生み出したのです。
また、残りの約10%のロスを使用して、アミノ酸液肥を作成。栽培中のにんにくに、この液肥をかけ循環型農法を行うようになりました。これにより現在、黒にんにくの製造過程におけるロスがほぼ無くなったのだといいます。

事業のポイント

装置の外観

黒にんにくを加工する熟成炉の内部の対流および輻射による熱流動を宮崎大学がシミュレーション解析を行い、得られた温度分布の経時変化を参考に、過乾燥対策のための遮熱板の設置および結露対策のための特殊装置を開発しました。その結果、歩留まりの向上に成功しました。

開発を通し、企業価値の向上を目指す

この事業を通じて

「くろまる」を使った商品の数々

「今回の研究成果を踏まえて、いかに付加価値の高い商品を生み出していくかが、今後の課題」と語る籾木社長。今後も、環境リサイクルやオーガニックにこだわり続ける姿勢は変わりません。
「こだわりを持つことで、商品価値を高めるのはもちろん、企業の価値も高めていきたいです。さらに国内だけでなく、世界に良いものを広めていければと思っています」

今後のビジョン

研究対象を一つに絞り深めていく作業は、充分な資金や人員、時間のない中小企業にとっては簡単にできることではありません。日々の職務を回していくことだけでも手いっぱい。かつてMOMIKIも、そのような状況に陥っていた企業の一つでした。
しかし、この事業への取り組みを通じて、一つのことを深め研究していく楽しさや必要性に気づいたと、籾木社長は話します。
「時間や労力がかかる分だけ、会社に新たな価値が生まれ、発展へと繋がります。そして、それは会社内に留まることなく、地域社会や環境へも還元していくことができるんです。そう気づけたことが当社にとって、とても大きな財産となっています」
また、この取り組みを通して人との出会いのありがたさも感じたそうです。
「今回、装置の開発とともに、南九州大学の皆さんの協力を得て新商品の開発も行いました。新たなアイディアが生まれたのも、環境リサイクル技術開発•事業化支援事業のもと、外部とのやりとりが可能になったからだと思います」開発された商品は、今後全国へ向け本格的に販売される予定です。

企業概要

株式会社 MOMIKI 企業外観

株式会社 MOMIKI
宮崎県宮崎市佐土原町下那珂10795
電話:0985-72-0135

平成26年、有限会社籾木工業から、株式会社MOMIKIに社名を変更し、研磨事業部、電子部品事業部から完全に撤退。食品事業専門の企業となります。
日本の高齢化を見込み平成18年に黒にんにくの開発を開始。現在、全国及び世界に向けて商品展開を行っています。

更新日:2023/03/11担当:新事業支援課