平成22年度:芋焼酎粕を排泄物処理剤に活用・利用者に清潔さと快適性を提供

環境リサイクル技術開発支援事業

伝統のカメ仕込み「古式醸造方」で製造した黒玄米酢

長年酢造りを続ける同社が、焼酎粕での酢造りに挑戦し始めたことから見えてきた「医療用排泄物処理剤」共同研究開発の道。医療・介護現場のニーズは高く、早期の商品化が期待されています。

焼酎粕を酢造りへ転用

酢造りには、酒粕が必須。同社では以前から熊本の酒蔵で酒粕を仕入れていましたが、その量は減少しており、代用品の必要性が増していました。
「自社製品には酒粕酢など、酒粕ありきのものもあって代用品探しは急務でした」(大山さん)
その頃、麹の作り方を学びに通っていた地元・国富町の焼酎蔵で、大山さんは優れた成分を持ちながら活用されていない焼酎粕に着目します。
「本来は捨てるものではなく、活用の余地があるはずだ、と焼酎蔵の社長もおっしゃっていました。菌を抑制する成分が入っていないのですぐに傷むのがネックでしたが、腐敗を防ぐのは酢の得意分野。機密性の高い容器に焼酎粕を入れ、酢を入れて保存してみたところ、うまく保存できることがわかったんですよ」

医療用排泄物処理剤開発に活路

焼酎粕での酢造りに着手した大山さんは、米焼酎の粕を使って、2010年には10点ほどの商品化に成功しました。ただ、本来目指していたサツマイモの焼酎粕では認知不足などの面で商品化を断念。次の展開を模索していたところに、以前から交流のある宮崎大学農学部教授から産学連携事業の話が舞い込みます。
「サツマイモなどの発酵材料に由来するデンプン・糖類・繊維・有機酸を始めとする有機化合物と、醸造過程で用いられる麹菌や酵母菌の菌体とを含む焼酎粕を主成分とする乾燥粉体を、排泄物処理剤として利用する技術シーズを保有していて、量産化に協力してくれる企業を探しているとの話でした」という大山さんは、プロジェクトに参画。2011年から始まった共同研究・開発で、安全性試験やパッチテスト、オストメイトによる試験利用を重ねています。
「大学側には技術シーズはあるがビジネスは未経験。当方はビジネスの実績はあるものの、単独では技術リソースに限界がある、ということで、双方で補完し合える組み合わせでした。医療向けの焼酎粕の用途開発は私にとっても発見であり、挑戦しがいがあります」(大山さん)

利用者や従業員の負担が多い医療・介護現場での商品化を

今後のビジョン

徹底した品質のチェックを行います

当面のゴールは、医療用排泄物処理剤としての商品化。現在は完成度を高めるための臨床試験とそのフィードバックを繰り返している最中とのことです。「商品化できないレベルではありませんが、医療用ということもあり、質を高めるべく開発を続けています。日本オストミー協会や特別養護老人ホームからのお話では、軟便の場合、利用者の方はおむつだと気持ち悪いし、スタッフの方も処理が大変だといいます」と語る大山さん。開発中の処理剤が商品化できれば、便後の洗浄も楽になるとして、さらなる改良を進めます。
「決して悪いものではないのですが、焼酎粕特有の香りは商品化するうえで課題になっています。価格と合わせ、開発と検討を進めながら、商品化を実現させたいと思います」。

この事業を通じて

豆腐の製造過程で出るおからなど、活用の可能性がありながらまだ有効に利用されていない天然成分の素材に気づくことができたという大山さん。「焼酎粕以外にも目を向け、新
たな活用法を模索していきたいと思います」

企業概要

古式醸造法

宮崎県東諸県郡国富町大字本庄5008
電話:0985 -77-1630

昭和5年の創業以来、地元の食材を使用し、地産地消・地域密着のスタイルで伝統的な発酵食品を造り続けている。有機JAS認定の無農薬有機農法の玄米と黒麹を、野外に設置した甕(かめ)に入れる「古式醸造法」で1年間をかけてじっくり作られる黒玄米酢は、県内外に多くのファンを生んでいる。仕込みから割水に至る工程のすべてでは、日本一の照葉樹林地帯が生み出す「綾の名水」を使用。健康食品や調味料などの開発・販売も手がける。

更新日:2023/03/11担当:新事業支援課