平成22年度:アスファルト舗装用フィラーへのフライアッシュ利用技術の開発

環境リサイクル技術開発支援事業

石炭火力発電所で発生するフライアッシュ

地元の石炭火力発電所の産業副産物であるフライアッシュ(石炭灰)をアスファルトのフィラーとして活用することに成功。環境負荷の低減と施工コストの削減を実現しました。

火力発電で発生する灰を有効活用

石炭火力発電所で発生するフライアッシュ。和光コンクリートが所在する県北では、年間約4万トンものフライアッシュが発生しており、そのほとんどがセメントの原材料として県外で廃棄物処理されてきました。
「県外へ輸送した上で処理するとなると環境に対する負荷とコスト負担がとても大きいんですよ」と語る金丸和生社長。なんとかフライアッシュを有効利用できないかと研究を重ね、コンクリート製品の混和剤としての実用化に成功しました。
ただ、コンクリートの混和剤として利用できるのは県北で発生する4万トンのフライアッシュのうち、JIS規格に適合する2万トンのさらに2割程度。どうにかして、もっと多くのフライアッシュを活用できないものか。そんな思いで同社が取り組んだのが、アスファルトの耐久性を向上させるフィラーとしてフライアッシュを利用しようという研究です。

従来のアスファルトと変わらぬ性能

自社敷地内での施工実験。フライアッシュのうち、未燃焼炭素分の少ないJIS3種適合品はアスファルト合材としての性能を満足することが確認できました

「県北地域ではアスファルト合材のフィラーとして年間約7,000トンの大分県産の石粉が使われています。その全量をフライアッシュに代えられれば、産業副産物を有効利用できるだけでなく、環境負荷を大幅に低減できる。そんな思いで研究を始めました」
そして行われた施工実験。従来のアスファルト合材と、フライアッシュをフィラーとして使用したアスファルト合材を自社敷地内の通路約1,000㎡に施工し、まずは施工性をチェック。施工半年後には、平坦性・わだち掘れ量・すべり抵抗などの測定を行いましたが、いずれも従来品と差がない結果が得られました。

環境保全、コスト減にもつながるが…

電子顕微鏡で2000倍に拡大したフライアッシュ。きれいな球状をしています

フライアッシュをフィラーとして使うとコストも下がり、石粉を輸送する際に発生するCO2も削減できるなど良いことずくめ。将来は公共工事でこの技術が採用されるよう、現在も研究開発を続けています。
「人類がこれまでの生活を続けていけば、地球が二つあっても足りないともいわれています。私たちが開発した技術を生かして、もっと環境保全の力になっていきたいですね」

フライアッシュ有効利用に向けさらなる研究を進行中

今後のビジョン

法面への吹付作業

和光コンクリートでは、その後、フライアッシュをさらに有効活用できる方法として『セーフマン吹付工法』を開発しました。
「セーフマン吹付工法は、法面の吹付に用いるコンクリートの原料であるセメントの一部、大体20̃30%ほどをフライアッシュにするんです。そうすることで、セメントの使用量を減らせるだけでなく、コンクリートそのものの品質もよくなるんですよ」と金丸社長。
さらに、セーフマン吹付工法は吹付作業そのものにも変革をもたらします。吹付作業は文字通りコンクリートを法面に吹付けるのですが、コンクリートをホースに通すには高い圧力が必要なため、多くのコンクリートが跳ね返ってしまいます。跳ね返ったコンクリートはリバウンドと呼ばれ、処分されるのですが、セーフマン工法ではリバウンド率が従来の40%程に抑えられます。
「フライアッシュを顕微鏡で覗いてみると非常にきれいな球状をしています。これがボールベアリングの役割を果たすので、圧力を上げなくてもコンクリートがホースを通るんですよ。さらにフライアッシュの効果で粘り気が出るので落下しにくいんですよ」
現在、同社では、セメントとフライアッシュを混合したものを袋詰めして施工業者に販売しており、この商品は、国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録されています。

この事業を通じて

「現在、フライアッシュをもっと有効利用できるものとして、コンクリートの材料の一つである砂を作る研究を進めています。最近県内各地に増えているバイオマス発電で出る灰にも着目しています」と金丸社長。
今回の事業で得たフライアッシュについての知見が、新たな事業展開へと発展しています。

企業概要

和光コンクリート工業 株式会社 企業外観

和光コンクリート工業 株式会社
宮崎県日向市東郷町山陰丙1537-1
電話:0982-69-2216

昭和38年設立。コンクリート製品の設計・製造販売に関する事業、およびこれらの付帯工事などを行っています。
森林支援のために開発した間伐材を使ったガードレール「ウッドGr」や、自然と共和・共生が可能なポーラスコンクリートの開発など、「自然との共生」をテーマに人と
自然に優しい製品づくりで、県内外から高い評価を得ています。

更新日:2023/03/11担当:新事業支援課