平成23年度:県特産・日向夏の残渣を活用・骨代謝改善に寄与する飲料へ

環境リサイクル技術開発促進対策事業

現在も開発中の、日向夏残渣を使った機能性飲料

ジュースの製造過程で大量に発生する日向夏の残渣。これに骨代謝改善効果が期待できるという宮崎大学の技術シーズに着目した同社は、他に例のない飲料としての商品化に取り組んでいます。

残渣低減と知名度の獲得が県内農業の振興の至上命題

毎年約2,000トンを加工する日向夏。果実の半分を占める果皮は破棄している

日向夏の残渣が骨代謝改善素材となる可能性があるという、宮崎大学が保有する技術シーズ。ジュースの製造過程で大量に発生する日向夏の残渣を減量したいと考えていた同社にとって、それは新しい製品化へのチャレンジを後押しする好材料でした。
「当社では日向夏を毎年約2,000トンほど加工しているのですが、製品になるのは果汁のみで、果実の半分を占める果皮は廃棄しています。相当量の廃棄ですので、これを何とか減らしたいという思いがありました。また、当社は県内農業の振興や販促支援を事業としていますので、日向夏の販売量を拡大するためにも、さらなる知名度向上は至上命題。それだけに、宮崎大学の技術シーズは新分野での知名度向上につながる機能性飲料の可能性を感じさせてくれるものでした」(薗田さん)。柑橘類を使った骨代謝改善を目的とする飲料は例が少ないとのことで、新規市場の開拓も期待されます。

純粋においしく飲める飲料としての質の向上を目指す

日向夏の果汁搾取の様子

プロジェクトは、同社と宮崎大学、化粧品や健康食品の原料メーカーである一丸ファルコス株式会社(岐阜県)がタッグを組んでスタート。宮崎大学の技術シーズを生かし、民間2社が商品化・事業化を担うかたちで平成24年4月から翌25年3月まで進行。残渣から有効成分を抽出し、試作品の開発や果実の部位別活性比較などを行いました。「抽出した有効成分を既製の日向夏ジュースに添加し、一般の消費者にご協力いただいてモニタリングをしましたが、安全性や味について特に問題はありませんでした。薬ではなく、あくまでも飲料としての商品化。おいしく飲んでもらえるものを目指して開発に取り組みました」(薗田さん)。

成果を新たな残渣活用につなげたい

今後のビジョン

「アグリビジネス創出フェア」に出展したときの様子。日向夏の認知度把握にぴったりの機会だった

日向夏ジュースは既に商品化されているので、新商品は骨粗鬆症の予防・改善が期待できることを示さなければ価値を見出せません。ただ、骨粗鬆症は自覚症状も乏しく、どこまでの予防・改善につながるのかという根拠を示すのが困難だと薗田さんは話します。「牛乳にたくさんカルシウムが含まれていても、どれだけのカルシウムを実際に吸収できるかは見えにくいですよね。含有量イコール吸収量ではない。機能性を示す上で、そこが難しいところです。引き続き、改善効果の検証を続けていきます」
また、骨粗鬆症は女性に多い病気として知られていますが、ユーザーを絞り込めば販売できる量も限られます。「大量の残渣を思えば、他の用途への応用も視野に入れていきたいところ。現在の研究結果が出揃えば、新たな可能性が見えてくるのではと思います」

この事業を通じて

農林水産・食品分野などの最新技術や研究成果の展示会「アグリビジネス創出フェア」に出展。来場者へのアンケートでは300名以上の回答が得られ、宮崎県外でも日向夏の認知度が高いことや、試作中の機能性飲料への期待の大きさを知ることができたのだそうです。
「今回の出展で日向夏のさらなる可能性を感じることができました。試作中の商品だけではなく、さまざまな展開を検討していきたいですね」

企業概要

宮崎県農協果汁 株式会社 企業外観宮崎県農協果汁 株式会社
宮崎県児湯郡川南町大字川南20016-3
電話:0983-27-1111

宮崎県JAグループの関連会社として、昭和48年に設立。消費量が低減していたみかん農家の経営安定を目的として、県内農家から購入したみかんを搾汁し、ジュース等に商品化したり、原料として販売することを事業としてきた。「サンA」の愛称のもと、現在は農産加工業をはじめ、自社ブランド飲料の製造・販売、受託製品の製造などを手がけている。主な製品は「サンA日向夏ドリンク」、「新サンAお茶」、野菜ジュース「色彩の食卓」、甘しょ飲料「これおいも」など。

更新日:2023/03/12担当:新事業支援課