平成24年度:CIS型太陽光発電パネルの製造工程規格外品からのレアメタル回収及び基板ガラスの再利用技術開発

環境リサイクル技術開発促進対策事業

CIS太陽光パネルのサーキット

廃棄物となったCIS 太陽光パネルを再利用することで、環境問題の解消につなげたいという思いから、レアメタル回収と基板ガラスを取り出すため自社装置を開発。低コストリサイクル技術を確立しました。

環境問題を解決するために

回収されたCIS膜の粉末

大気・水質・土壌分析をはじめ、廃棄物処理およびリサイクルに関するコンサルタント業務を行なう西日本環境技研(株)が今回着目したのは、CIS太陽光パネルの工程規格外品。CIS太陽光パネルの半導体に含まれる、希少価値の高い「レアメタル」と、その基盤となる「特殊ガラス」を取り出し、自社でリサイクルすることで、環境的にも経済的にもプラスになると考えた平山社長は、宮崎県工業技術センターに協力を依頼。事業化にむけてリサイクル技術の開発をスタートさせました。

偶然から生まれた奇跡の技術

自社で開発した基盤ガラスを取り出す装置

今回の研究材料は工程規格外となったCIS太陽光パネルのサーキットと呼ばれる部分。サーキットは、基盤ガラスの上にモリブデン膜、レアメタル、亜鉛膜の3層で構成されています。まずはレアメタルを取り出すために、これまでの経験を基に亜鉛膜を苛性ソーダ(強アルカリ性の薬品)で溶解。その際、偶然にもレアメタルが一緒に剥離。期せずしてレアメタルを取り出すことに成功します。その後さらに研究を重ね、基板ガラスに蒸着していたモリブデン膜を塩酸につけて完全に除去。クリアな基盤ガラスを取り出す技術も確立しました。

さらに上を目指した研究を

クリアになった基板ガラス

サーキットにはインジウム、ガリウム、セレンのレアメタルが使われており、それらを1つの集合体として取り出せたことで、品質・価格共に想定していた以上の好評価が得られました。再生ガラスについては品質的には問題がなかったものの、ガラス市場の価格が安い現時点では、単独の事業化は厳しいという結論になりましたが、将来大量に発生するであろう太陽光パネルのリサイクルに向けた技術を確立できたといいます。

将来にむけて低コストで環境にやさしい大量処理技術開発を

今後のビジョン

今回の研究では、単独の事業化は難しいという結果になりましたが、太陽光パネルの寿命は約20年、平山社長は、将来的な展望として、使用済みの太陽光パネルを大量に処理できる技術の開発を続けていきたいと話します。
「普段の分析業務だけでなく、技術開発にまで手を入れられたことで新しい発見が多かったですね。今後は研究に使用したCIS太陽光パネルに次いで、家庭などで広く普及しているシリコン太陽光パネルのリサイクル技術開発などにも力を入れていきたいです」

この事業を通じて

サーキットの光電変換機能となる、モリブデン膜、レアメタル、亜鉛膜はCIS膜と呼ばれ、それらをリサイクルする際、一般的にはブラッシングという方法で粉にして取り出します。しかし、CIS膜に含まれるセレンは、水に溶けると毒性を示すため、無意識のうちに環境汚染や人体汚染が進行している場合があり、作業環境面に関して注意が必要でした。今回苛性ソーダで溶解することで固体として取り出せたことは、安心して研究ができる環境づくりにもつながりました。

企業概要

西日本環境技研 株式会社 企業外観

西日本環境技研 株式会社
宮崎県小林市東方3771-3
電話:0984-23-4562

平成6年、本社である九州北清株式会社設立。その後分社化し、環境分析などを通じて、安心して暮らすことのできる環境作りや、廃棄物処理およびリサイクルに関するコンサルタント業務を行っています。専門分野のエキスパートによる測定、分析で、環境への取り組みを効果的・効率的に行なうことを目的にした、エコアクション21が県内で初めて認証された会社です。

更新日:2023/03/12担当:新事業支援課