平成24年度:水産加工廃棄物から抽出するマリンコラーゲンの製品化

環境リサイクル技術開発促進対策事業

シイラから抽出したマリンコラーゲンボール

加工残渣として廃棄してきた魚の皮から、コラーゲンの抽出に成功。みりん干しなどの自社製品に利用することで付加価値を生むとともに、食品会社などに販売することで収益増を目指しています。

産廃物だった魚の皮を再利用

事業の体制・仕組

宮崎県の水産加工品において算出される、魚あら・骨・内蔵・皮などの加工残渣は年間約1.3万トン。肥料化したり、産廃処理業者が処理するなどして処分されていますが、その処理費用が経営を圧迫する一因となっています。この加工残渣のうち、魚皮に目をつけたのが水永水産です。
同社の主力商品の一つである「焼きしいらの焼酎もろみ漬」。その製造過程で発生するシイラの皮からコラーゲンを抽出し、そのコラーゲンを使って自社商品の付加価値を高めようという試みを行いました。
「良質のコラーゲンを含んだ魚皮を有効活用して、水産加工業者の経営安定に寄与できればと思ったんですよ」と、先頭に立ってこの事業に取り組んだ黒木隆一社長。

他社への販売を視野に

シイラの皮から抽出したコラーゲンを調味料に添加した「さばみりん干し」。身割れすることなく、ふっくらと焼きあがります

実は、水永水産ではこの事業に取り組む数年前から、シイラの皮からマリンコラーゲンの抽出を行ってきました。ただ、魚由来のコラーゲンであったため、どうしても魚特有の臭いがあったのだといいます。
「抽出したコラーゲンを自社の加工品に用いるだけなら臭いがあっても問題はなかったのですが、コラーゲンそのものを食品会社に販売することを視野に入れると臭いがネックになってしまいます。そこでこの臭いをどうすれば消すことができるのかがこの事業の大きなテーマとなりました」

魚皮のリサイクル工程を確立

熱水抽出する前のシイラの皮

宮崎県水産試験場などの協力を得て、試行錯誤の末にたどり着いた答えが活性炭とゼオライトでした。
両者とも臭いの成分を吸着する性質をもっていることが知られていますが、シイラの皮を煮だしたゼラチン液を活性炭で処理することで臭いのないコラーゲンを抽出することに成功。廃棄物として処理されてきた魚皮をリサイクルする仕組みが確立されたのです。

コラーゲンを広く展開して収益アップへ

今後のビジョン

美容や健康などで注目を集めるコラーゲン。水永水産ではこのコラーゲンを使った新たな展開を検討しています。
「魚を含め、海洋生物から得られるマリンコラーゲンは、豚や鶏から得られるアニマルコラーゲンに比べて脂質やカルシウムが少なくて純度が高いんです。おまけに低温で溶けるので体への吸収率も高いんですよ」と黒木社長。
現在は自社の加工工程で出る魚皮だけを使っていますが、今後は県内の加工業者の魚皮を、コラーゲンを豊富に含むシイラを中心に確保していきたいとのこと。
「魚皮を活用することで廃棄物処理の費用を軽減できるだけでなく、抽出したコラーゲンを積極的に加工品に添加して利用することで、商品に付加価値を与えていきたいと考えています。
さらに、抽出したコラーゲンを使ってコラーゲンボールの開発も手がけていきたいですね。業務用を含め、コラーゲンを簡単に利用できるような商品開発を続けて、販路を拡大できれば」と黒木社長は意気込みます。

この事業を通じて

今回の事業を通じて、再利用など思ってもいなかった加工残渣に色々なリサイクルの要素が含まれていることに驚いたという黒木社長。
「これからも再利用できる商品開発を念頭に入れながら、情報収集を進めていきます」と締めくくっていただきました。

企業概要

株式会社 水永水産 企業外観株式会社 水永水産
宮崎県東臼杵郡門川町尾末9083-1
電話:0982-63-1032

昭和24年の創業以来、宮崎県の地域産業資源であるイワシ、アジ、サバ類を使った、丸干し、開き、みりん干し、ちりめん等の水産加工食品を製造し、卸・小売販売を行なっています。
脈々と受け継がれる伝統の技術と精神を駆使した商品は、年に一度開催される「全国水産加工品総合品質審査会」で数々の賞を獲得。平成20年には「ひむかの唐人干し」が農林水産大臣賞を受賞するなど、良質な地域資源を活用した魅力ある商品を作り続けています。

更新日:2023/03/12担当:新事業支援課