平成25年度:錫めっき廃棄物からの錫回収装置の開発及び錫リサイクルモデルの開発

環境リサイクル技術開発促進対策事業

回収された錫スラッジ


産業廃棄物として処分されてきためっきスラッジ。開発した錫回収装置を活用し、高濃度の錫スラッジを作成することで錫精錬業者への売却が可能に。産廃コスト削減と資源リサイクルを両立させるモデルが完成しました。

全国初、錫めっき廃液からの錫リサイクル

工場内のめっきライン

延岡市の五ヶ瀬川沿い、延岡鐵工団地内に本社を置く吉玉精鍍株式会社では、電気めっき加工など各種表面処理加工を行っています。同社が今回取り組んだ事業が、錫めっき廃液からの錫のリサイクルです。
電子部品などに錫めっきを行う際に、廃液から大量に発生するめっきスラッジ。通常は、産廃業者を通じて処分されていました。
「スラッジ中には、ドライベースで約5%もの錫が含まれており、これは我が社が購入する錫原材料のおよそ2割に相当します。これは地金換算で約330万円に相当する量なんですよ」と語るのは、代表取締役専務の吉玉和生さん。
スラッジ中の錫を回収し、有価売却できれば、廃棄物であるスラッジが削減できると廃棄コストの改善につながるという、全国初の試みとなる錫めっき排水からの錫リサイクルに取り組みました。

錫リサイクルの事業化に向けて

事業の体制・仕組

こうして始まった錫回収装置の開発。回収したスラッジを錫製錬会社に買い取ってもらうには、スラッジの錫含有率が50%を超えている必要があり、そのためには、めっき排水や廃液から効率的に錫を回収する必要がありました。
九州めっき工業組合の環境リサイクル委員会の委員長を務める吉玉専務は、その連携を生かして同じ委員会メンバーである企業や、福岡県工業技術センター機械電子研究所、宮崎県工業技術センターなどからの支援を得て装置を完成。錫単独廃液の中和沈殿法によって、錫めっき排水からの錫回収率95%以上を実現させることに成功しました。

リサイクルモデルの普及へ

今回開発した錫回収装置。毎分10リットルの排水を処理することができます。

その後、回収装置の自動化、無人化への改善・改良を進めて、錫リサイクルモデルを事業化した同社。
「社内での事業化は完成したので、これからは錫を取り扱う多くの事業者へこのモデルを普及させていきたいですね。そうすれば、事業者の収益にもなりますし、環境へも貢献することができます」と、吉玉専務。
今後は装置そのものの販売にも力を注ぎたいと、新たな事業展開に期待を寄せています。

錫リサイクルモデルを全国の錫めっき事業者に普及させたい

今後のビジョン

吉玉精鍍が今回の開発に取り組んだ背景には、「地域社会に貢献し、人間そして地球環境尊重の経営を行う」という経営理念があります。
前述のように、九州めっき工業組合の環境リサイクル委員長であると共に、全国鍍金工業組合連合会の環境委員でもある同氏は、業界全体のリサイクルにつながるよう、力を尽くしています。
「現在、我が社で回収できる錫の量は最大でも年間約1.5トンと、最大手の錫製錬会社が年間で生産する錫800トンに比べれば、ごくわずかな量です。
しかし、錫めっき事業者は九州だけでも約20社、全国には数百社もあるので、そのすべてに錫リサイクルモデルを普及させることができれば、かなりの量の錫をリサイクルできます。その分だけ産業廃棄物の削減につながるんですよ」と吉玉専務。

この事業を通じて

「回収した錫スラッジの売却先である金属精錬業者との協力関係を確立できました。その結果、今まで安価で売却していた金属類を、より高値で売却できるようになりました」と、吉玉専務は今回の事業の副産物に言及します。
今後は、クロムやニッケルのリサイクルにも取り組み、廃棄物から有価物を取り出すリサイクル技術の確立を目指していきたいとのことです。

企業概要

吉玉精鍍 株式会社 企業外観吉玉精鍍 株式会社
宮崎県延岡市大武町39番地24
電話:0982-33-1251
昭和21年、延岡市に個人自動車修理工場として創業し、昭和29年にめっき工場として開業。県内に2社しかないめっき工場の一つとして、県内や九州を中心に、電子部品の表面処理などを受注しています。
また、技術開発型企業を目指して多くの開発を行い、顧客の新製品開発の一翼を担うと共に、携帯電話販売など情報通信関連事業も展開しています。

更新日:2023/03/12担当:新事業支援課