平成26年度:鶏ふん燃焼灰と牛肉骨粉を使ったトマト専用高付加価値有機質肥料の開発

環境リサイクル技術開発・事業化支援事業

地域で発生する畜産副産物を飼料や肥料に有効利用する同社。未利用資源だった鶏ふん燃焼灰と牛肉骨粉を使ったトマト専用の有機質肥料を開発しました。

Vision01. 増え続ける鶏ふん燃焼灰をどう生かすか

国産原料だけを使った肥料としての価値も高いトマト専用高付加価値有機質肥料

県内全域で発生する鶏ふんを受け入れ、発電ボイラーの燃料として利活用している同社。1日に600トンもの鶏ふんを処理するのですが、そのうちの1割が燃焼灰として残ることから、その灰をどう有効活用するのかを検討していました。
「2013年には県内で発生した鶏ふんの約6割18万トンを焼却処理したのですが、その後も受け入れる鶏ふんの量は増加しています。それに合わせて増える燃焼灰をリン酸・カリ源として活用することが急務だったんです」(肥料部長・道辻さん)

Vision02. BSEで使用禁止になった牛肉骨粉の復活

鶏ふん燃焼灰。南国興産を含む県内企業2社で、県内で発生する鶏ふんのほぼ全量を処理しています

同じ時期に、未利用資源としてその用途を広げようとしていたのが、昔から優良な肥料として使われてきた牛肉骨粉です。2001年に国内でBSEが発生して以来、飼料にも肥料にも使用が禁止されていたのですが、2013年に肥料への使用が解禁されたのです。
「BSEの発生以降、年間3,700トンもの牛肉骨粉を産業廃棄物として処分しなければなりませんでした。せっかくの資源を無駄にせざるを得ない状況が続いたので、循環型社会構築の観点からも、牛肉骨粉を使った有機質肥料を開発することが喫緊の課題でした」

Vision03. 有機100%のトマト専用肥料

鶏ふん燃焼灰と牛肉骨粉。同社は、共に利用拡大が急務だったこの2種を原料に使ったトマト専用の有機質肥料の開発に取り組み、窒素6:リン酸8:カリ4というトマトが好む成分の有機質肥料を形にしました。
「鶏ふん燃焼灰は、肥料の三大成分である窒素・リン酸・カリのうち、リン酸とカリの含有量が高く、植物に必要なミネラル分も含んでいます。一方の牛肉骨粉には、窒素・リン酸・アミノ酸が含有されているんです。両者は既存の化成肥料と比べても肥効性に遜色がない上、作物への機能性付与も期待できると考えています」(肥料開発:東﨑さん)

品質、機能性ともに自信を持って販売できる肥料へ

肥料部長
道辻 純一郎

肥料部・肥料開発係長
東﨑 千草

今後のビジョン

畜ふんボイラーやその熱源を利用する飼料製造装置など施設の近代化を図りながら資源循環型社会の構築を目指す同社

開発したトマト専用有機質肥料は、生産者の協力を得て2年間のほ場試験が行われました。
「市販肥料(主に化学肥料)と開発肥料を用いて調査を行ったところ、まず肥料代を約30%削減することができました。糖度・酸度などの食味については市販肥料とほぼ同等の結果でしたが、A品の出荷量が増加しています。実際に開発肥料を使った生産者さんからは“実感として収量が上がってきている”という声もいただいていますし、宮崎大学による栽培試験では、栽培時期によって差はあるものの、機能性の面でも優位性が見られたという結果が出ています。
今回の研究を通じて収益性と品質の向上の可能性を見いだせたので、あとは商品化に向けて再現性の検証を継続し、自信を持って品質の向上をうたえるようにしたいですね」(東﨑さん)
地域の畜産農家と耕種農家、さらには食品関連産業に大きなプラスとなる可能性を秘めたトマト専用有機質肥料。その完成に向けた同社の取り組みは続きます。

この事業を通じて

実際に試験で栽培されたトマト

「この肥料ができてから何度か展示会に参加したのですが、国産の有機質肥料への需要がかなりあることがわかりました。自社資源循環システムにも国内外から多くの方に関心を示していただいたので、今後もこれまで通りに循環型社会の構築に貢献していきたいですね」(道辻さん)

企業概要

南国興産 株式会社南国興産 株式会社
宮崎県都城市高城町有水1941番地
電話:0986-53-1062

1973年創業。「資源循環型社会の構築なくして地域農業の発展はありえない」という考えのもと、農畜産分野から生まれる副産物、さらにはスーパーやコンビニから出る食品残渣を、肥料・飼料・油などへ再生するレンダリング事業、鶏ふん及び畜ふんを燃焼して発電するエネルギー・環境事業、その際に発生する燃焼灰を使った肥料の生産などを行っています。

更新日:2023/03/13担当:新事業支援課