平成27年度:廃シリカゲルを混合したセラミックでコケ緑化基盤材を開発

環境リサイクル技術開発・事業化支援事業

シリカゲル製品を生産する際に大量に発生する廃シリカゲルを混ぜ合わせたセラミックで緑化基盤材を開発。ヒートアイランド現象の緩和につながる屋上緑化の普及を目指します。

Vision01. 副産物を環境保全に生かせないか

日射や暑さにも強いスナゴケを使ったコケ緑化基盤材。大きさは15cm四方

シリカゲルを原料に、乾燥剤や食品添加ろ過助剤など、さまざまな機能性材料を生産する富士シリシア化学株式会社。その製造過程で副産物として排出される廃シリカゲルは産業廃棄物として処理されていました。
そのような状況が続く中、同社は資源の有効活用と環境保全の観点から、廃シリカゲルを再利用できないかと検討を重ね、ヒートアイランド現象の緩和ならびに夏季の省電力化につながる屋上緑化に着目します。
日射熱による表面温度や周辺温度の上昇抑制、さらには屋内温度も低減する屋上緑化ですが、重量や設置コスト、排水などの問題からあまり普及していません。そこで、廃シリカゲルを再利用したセラミック製の緑化基盤材を開発することでそれらの課題を解決し、屋上緑化を促進しようというのです。

Vision02. 屋上緑化の普及につながるコケ緑化基盤材

廃シリカゲルを使ったセラミック。コケが滑り落ちないように表面に凹凸がつけられています。

「良質な粘土に20%程度の廃シリカゲルを混ぜ込んで、1000℃の高温で焼成することにより多孔質で高吸水性のセラミックができます。そのセラミックにコケを接着させる。それが私たちの開発したコケ緑化基盤材です」と話すのは、共同研究を行った宮崎大学の木之下広幸准教授。
軽くて設置が容易、しかもメンテナンスも簡単と、これまでの屋上緑化の課題を解決する緑化基盤材が完成したのです。
「水を吸わせたコケ緑化基盤材は、水分の蒸発熱によって日射による温度上昇を抑制することができます。実験によると、真夏の日差しを浴びた場合、モルタルでは50℃まで表面温度が上がるのですが、コケ緑化基盤材の場合は上がっても気温と同じ温度なんです。1㎡あたりの重量も最大で25kg程度なので、建築基準も軽くクリアしているんですよ」(木之下准教授)
技術的には実用性が確立されたコケ緑化基盤材。あとは製品化されるのを待つばかりです。

さまざまな可能性を秘めるシリカゲル混合セラミック板

宮崎大学工学部
機械設計 システム工学科 准教授

木之下 広幸

今後のビジョン

粉砕したセラミック板は高吸水性の特徴を生かしてハイドロカルチャーにも利用できます

東京都では2001年4月より、『東京における自然の保護と回復に関する条例』で、一定基準以上の敷地における新築・増改築の建物に対して、その敷地内(建築物上を含む)への緑化を義務付けています。これは事実上の屋上緑化促進となっているのですが、先述の通り、屋上緑化は進んでいません。
「製品化が実現すれば、環境保全に役立てるのに加え、廃シリカゲルの産廃コスト削減、コケ緑化基盤材の製造に関連する窯業や造園業の活性化にもつながります」と木之下准教授。宮崎大学構内に設置した屋上緑化模擬試験設備によって、その性能が実証されているだけに、何とか製品化して屋上緑化の推進につなげられればと可能性を探っています。

この事業を通じて

実証実験を行った屋上緑化模擬試験設備。内部は4つの空間に分かれています

「今回の研究でわかったことなのですが、シリカゲルを混合したセラミック板は、多孔質なので微粒子を吸着する性質があります。その性質を生かして、排ガスなどの有害物質をきれいにする研究を進めています」と木之下准教授。廃棄物として処理されていた廃シリカゲルは、これから先、さまざまな用途で活躍しそうです。

企業概要

富士シリシア化学 株式会社富士シリシア化学 株式会社
宮崎県日向市大字日知屋字木原16303-3
電話:0982-53-7051

乾燥剤・除湿剤・調湿剤・吸着剤・クロマトゲル・触媒坦体など、衣食住の分野をはじめ、医療、文化、科学等あらゆる分野に適合した合成シリカ製品を供給。さらなる用途開発に努力しています。
本社は愛知県春日井市で、海外にも営業所や工場を構えています。日向工場は1984年から稼働しています。

更新日:2023/03/13担当:新事業支援課