平成28年度:建設・土木工事の排水を固液分離させ廃棄コスト、作業負担、環境負荷を大幅削減

環境リサイクル技術開発・事業化支援事業

工事で発生する廃液を短時間で処理できる固液分離剤を開発。処理装置も合わせて開発することで、コストも作業も軽減し、自然環境にもやさしい新たな工法を確立しました。

Vision01. 自然に負荷をかけない廃液処理

対象となる廃液に合わせて成分を調整することが可能

橋梁や桟橋などの解体業務などを行う(有)日向栄進産業。特殊カッターの技術を生かしたワイヤーソー工法等で橋を切断していくのですが、その際に発生する廃液をどう処理するかという課題を抱えていました。
「コンクリート切削時に発生する廃液を、そのままの状態で海や川に流してしまうと、pHが高いため魚が死んでしまうこともあるんです。白く濁ったままの水が底に定着すると固まってしまいますしね」と吉田瑞穂社長。このままではいけないとpHと濁度の調整に取り組みます。そして開発したのが、水と汚泥を短時間で分離させる高精度の固液分離剤でした。

Vision02. 循環型社会にも貢献

ひむか式固液分離汚水処理システムで多くの橋を解体しています

『ひむか式固液分離剤かたるまくん』と名付けられたこの固液分離剤の使い方は至って簡単。建設・土木工事で発生した廃液に入れて混ぜるだけですぐに水と固体に分離し、分離された水のpHは5.5〜8.5に調整されているので、環境に負荷をかけることなく排水できます。一方の固体も再生ランとして使用することが可能なので研究を進めています。
「建設・土木工事の廃液は、現場外に排水することなく回収して産廃処理しなければなりません。かたるまくんを使うことで、廃液回収の作業負担と廃棄コストを削減できるだけでなく、循環型社会の構築にも貢献できるんです」

Vision03. 新たな工法を確立

かたまるくんによるコンクリート汚水の処理

同社はさらに、固液分離処理機械を開発し、『かたるまくん』を活用した『ひむか式固液分離汚水処理システム(特許)』を構築しました。
「天草のとある橋を解体する時のこと、地元の漁業組合や観光協会が視察に来たんです。そこで、うちのシステムを使った解体方法を実演したら、“これなら海が汚れなくて大丈夫”と安心してもらえましたよ」
作業効率を格段に向上させ、自然にもやさしいこのシステムは、多くの現場で高く評価され、平成28年度には『宮崎県新技術・新工法』に登録されています。

農業分野へも応用することで宮崎の力に

代表取締役
吉田 瑞穂

今後のビジョン

1.5平方メートルほどのスペースがあれば設置可能な処理機械

「もともと、かたるまくんは建設・土木工事の廃液用に開発したものですが、他の分野でも応用できるんですよ。例えば、焼酎メーカーさんが甘藷を洗浄した後の泥水の処理。1㎥であれば30秒程度、一瞬で分離します。他にも、ガソリンスタンドの洗車排水、飲食店での米のとぎ汁や、うどんのゆがき汁など、配合を変えるだけでさまざまな用途に使用できるんですよ。
なかでも今、力を入れていこうとしているのが豚ぷん(豚の糞尿)の処理です。豚ぷんがそのままの状態で地中に染みこむと土壌汚染につながりかねません。その豚ぷんを固液分離させて処理できる処理剤を宮崎大学と共同で開発したんです。
この処理剤を使うと、真っ黒な豚ぷんが緑茶の様な色をした液体と固体とに分離され、においもなくなるんです。現在は、専用の処理機械を制作中なのですが、ゆくゆくは宮崎にたくさんいらっしゃる養豚農家さんの力になれればと思っています」

この事業を通じて

回収したコンクリート切削廃液にかたまるくんを投入

「企業として、世のため人のためになることが一番大切だと考えています。この画期的なシステムを中央ではなく、宮崎から発信し続けることで、宮崎の力になれればうれしいですね」

企業概要

有限会社 日向栄進産業有限会社 日向栄進産業
宮崎県宮崎市田代町111番地
電話:0985-71-3145

特殊カッター業を主力に、平成21年創業。事業内容は、橋梁・桟橋等特殊解体工事のコンサル業務や、コンクリート・木造構造物及び家屋解体工事、土木工事・建築工事一式。
『親切・丁寧な技術提案』『安全・確実な施工提案』『安全・安心の現場施工』を基本理念に、地域環境の保持にも積極的に取り組んでいます。

更新日:2023/03/13担当:新事業支援課