平成28年度:処理コストに苦しむメーカーが注目 焼酎粕を焼酎づくりの燃料に

環境リサイクル技術開発・事業化支援事業

焼酎メーカーが頭を悩ませる焼酎製造後に出る焼酎粕の処理コスト。そのコスト軽減とCO2排出削減を実現する画期的な焼酎粕処理プロセスが開発されました。

Vision01. メーカーの経営を圧迫する焼酎粕


開発された多段精留蒸留器

統計が出ている2017年度まで、4年間連続で出荷量日本一を誇る宮崎の焼酎。環境に関する新事業を模索していた同社が目を付けたのは、その製造過程で発生する焼酎粕(焼酎蒸留粕)でした。
この焼酎粕、以前は海洋投棄することができたのですが、ロンドン条約により2001年から全量陸上処理が義務付けられたのです。
「焼酎メーカーにヒアリングを行ったところ、焼酎粕の処理には多大なコストが掛かっていました。ある社長さんが、“焼酎粕を制する者が業界で生き残れる”と表現されるほど、処理コストの削減がメーカーにとっての大きな課題だったんです」(同社焼酎バイオマス事業部:池田さん)

Vision02. 焼酎づくりの燃料として再生

焼酎粕に芋クズ等を加えて発酵させたもの。この液体を蒸留してエタノールを抽出します。

メーカーの課題である焼酎粕をどう活用するか、その答えは、焼酎粕から高濃度のエタノールを抽出し、焼酎を蒸留するための熱源として利用することでした。
「焼酎粕に、芋クズなどでんぷん質を含んだ食品廃棄物を加えて発酵させ、それを焼酎同様に蒸留するんです。そうやってエタノールを抽出し、残った廃液は固液分離して、そこからさらに固形バイオ燃料を製造します。メーカーが処理コストに頭を悩ませていた焼酎粕が、焼酎づくりの燃料として再利用できるんです」(宮崎大学:塩盛教授)

Vision03. 実用化に向けた多段精留蒸留器の開発

今回開発された焼酎粕処理プロセスの肝は、棚段精留塔を蒸留釜の上部に設置した多段精留蒸留器です。焼酎メーカーが用いる一般的な蒸留器では、エタノールの濃度を燃料に適した濃度にするのに蒸留・濃縮する作業を3度も繰り返す必要があります。それでは、手間も燃料もかさんでしまうのですが、開発した蒸留器であれば一度で済ませられます。
「多くの焼酎メーカーがこのシステムに大きな期待を寄せているので、一日も早く実現させたいですね」(池田さん)

目指すのは地場産業への貢献そして環境問題への挑戦

イノベーション戦略本部
焼酎バイオマス事業推進室
池田 勇人

今後のビジョン

共同研究開発に携わった宮崎大学の塩盛弘一郎教授

「このシステムの実用化に向けて、宮崎大学の構内に実証パイロットプラントを建設して実験を行ってきたのですが、2019年11月に1日15トンの焼酎粕を処理できるプラントを日南市で稼働させる予定です。ここでは、焼酎メーカーから焼酎粕を運んで来て、実用化に向けた実証試験を行います。
今回、宮崎大学と共同研究開発を行ったことで、当社の新分野として焼酎バイオマス事業を確立させることができるところまで来ています。この事業によって、宮崎県の地場産業である本格焼酎産業に貢献していきたいですね。

この事業を通じて

宮崎大学構内に建設された実証パイロットプラント

今回は焼酎粕の再利用でしたが、農業県である宮崎にはさまざまな農業廃棄物があります。宮崎大学とさらに共同研究を進めてバイオマス燃料製造プロセスを確立させ、CO2排出の削減など環境問題に取り組んでいく考えです。

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更新日:2023/03/13担当:新事業支援課