平成28年度:採卵後のチョウザメの頭・骨・皮などを原料にした調理原料およびアスリート用レシピの開発

環境リサイクル技術開発・事業化支援事業

養殖尾数日本一を誇る宮崎のチョウザメ。ただ、その目的はキャビアであり、魚肉が日の目を見ることはありませんでした。魚の卸しを行う同社は、魚肉の機能性に目を付け、アスリート向け原料とレシピを開発しました。

Vision01. 最後まで完璧に使い切る

県全体で生産されるチョウザメのうち9割を同社が扱っています

1983年から30年にわたる研究の末、2013年に商品化された宮崎県産のキャビア。2019年度には2トンの生産量を目指しています。このキャビア、周知のとおりチョウザメの卵なのですが、その魚肉や骨、皮などキャビア以外の部位に着目したのが株式会社九州築地の築地代表です。
「県のキャビア事業が拡大するのに連れ、チョウザメの養殖尾数が今後ますます増えていくことは間違いありません。それはいいことなのですが、養殖業者さんからは“オスの魚肉が余る”“この先、採卵後のメスの魚肉の取り扱いが不安”という声も聞こえてくるんです。そこで、当社がすべきは、チョウザメの魚肉の取り扱いを広めることだと思ったんです」(築地代表)
フグのような食感とクセのない味わいのチョウザメの身は、オスの場合、雌雄判別後に魚肉として利用されていますが、メスの場合は骨や皮と一緒に廃棄処分されているのだと言います。
「宮崎のキャビア事業が世界に認められる“美しい”産業として成り立つためには、メスの魚肉を廃棄することなく完璧に使い切らなければならないし、オスについても販売ルートを確立する必要があります。でなければ養殖業者さんは継続してキャビア事業に取り組めないと思うんです」

Vision02. 宮崎のスーパーフードに

空気に触れるとだんだんべたついてくるというチョウザメエキス粉末。コラーゲンもたっぷりと含まれています

チョウザメを有効利用するに当たって同社が着目したのが、豊富に含まれている機能性成分です。チョウザメの魚肉には、抗酸化作用を持つイミダゾールジペプチドであるカルノシンが多く含まれていることが知られていますが、未利用部位である頭・骨・皮などの粗(アラ)にもカルノシンが含まれていることが宮崎大学との共同研究でわかったのです。
「宮崎にはいろいろな魚がありますけど、他県にはない魚といえばチョウザメじゃないですか。機能性を売りにしてアスリート向けに展開していけば、“スポーツランドみやざき”に食の面から貢献できますよね」
アスリート向けのスーパーフードとして、宮崎の売りになる可能性を秘めたチョウザメ。同社はその実現に向け、頭・骨・皮とそれに付着する肉を粉末にしたチョウザメエキス粉末と、魚肉を使ったアスリートレシピを開発したのです。

宮崎を代表する魚としての地位を確立させたい

代表取締役
築地 加代子

今後のビジョン

真空で冷凍保存されるシロチョウザメフィレ

「魚肉に関しては、2016年の春にJリーグ3チームに提案してメニューに採用していただいていますし、学食のメニューとして取り入れていただいている学校もあります。パウダーは、スープやだしに混ぜれば気軽に摂取できますし、麺に練り込むなど、さまざまな応用が可能です。魚肉と一緒に食べれば、より効果があるのではないでしょうか。
今後はホテルなどのアスリート受け入れ施設や栄養士さんたちと協力して、宮崎を代表する魚としての地位を確立できるようにしていきたいですね。ゆくゆくは一般の方も気軽に購入できるようスーパーにチョウザメが並ぶようにまでなればと思っています」

この事業を通じて

チョウザメエキス粉末を利用したスープ

「チョウザメをエキス粉末にする技術がしっかりと実績を重ねられれば、シイラなど大量に捕獲できるが低価格でしか取り引きされていない魚にも導入して、宮崎の水産業界に貢献できるのではないかと期待しています」

企業概要

株式会社 九州築地 企業外観株式会社 九州築地
宮崎県宮崎市田代町250-2
電話:0985-28-7845

「ひむか本サバ」や「へべすぶり」などの鮮魚をホテルや飲食店に卸す鮮魚卸し専門店。自社内にある約200トンの活魚槽には、連日、各地で養殖されたブランド魚が直送され、注文によっては活〆をしてから出荷しています。
安全・安心の商品を届けるためにトレーサビリティシステムに取り組んでおり、取り扱う全養殖魚は安心・安全なものばかりです。

更新日:2023/03/13担当:新事業支援課